今回は、株式会社雪国まいたけを取り上げてみました。新潟県南魚沼市には全国ブランドが2つあります。ブランド米「魚沼産コシヒカリ」と並び称されるのが「雪国まいたけ」です。CMでよく聞く「きのこの唄」で、キノコと言えば、長野県のホクト株式会社の方が有名になってしまいました。
それでは雪国まいたけの2014年3月期までの5年間を見てみましょう。
企業力総合評価は、98.59P→82.98P→33.18P →26.15P→67.51Pと推移しています。過去5年間正常領域である100P以上にあったことが有りません。2012年2013年は破綻懸念の60P以下です。
営業効率(儲かるか)は、2012年2013年赤信号領域です。2014年に回復したとはいえ、青赤ゼロ判別に近いところにあります。資本効率(資本の利用度)も営業効率と同じ状況です。
生産効率(人の利用度)以下、資産効率(資産利用度)、流動性(短期資金繰り)、安全性(長期資金繰り)全てが5期連続赤信号領域です。厳しい状況です。会社は赤信号領域に入る指標が多くなると倒産に近づきます。ですから、赤信号領域に入れば、直ぐに青信号領域に戻らなければなりません。赤信号領域に放置された指標が多すぎます。
この会社は、本来5年分析では足りません。悪くなり出した時期、悪化原因やその度合いを明確化する必要性があります。EDINET(金融庁のHP、有価証券報告書の開示サイト)では過去5年の情報しかないことが残念です。
雪国まいたけ(東証2部上場)は2014年6月27日に開いた株主総会で、創業家によって経営陣が排除される動議がありました。会社提案の取締役人事案は、星名光男現社長ら7人の取締役の再任でしたが、大株主の1人である大平安夫氏(創業者実弟)から取締役人選の動議が出され、取締役7人のうち、星名氏を含む6人を入れ替えるという内容でした。この動議は賛成多数で可決され、星名氏らは取締役の退任が決まり、大平安夫氏の動議に基づいた6人が取締役に就きました。
この動議で、会長兼社長には、元本田技研工業専務でNEW DEVICE代表取締役の鈴木克郎氏が就任。東亜燃料工業(現東燃ゼネラル石油)社長や日本銀行政策委員会審議委員を務めた中原伸之氏、人工雪のベンチャー企業のスノーヴァ(現アドバックス)元社長・大塚政尚氏が社外取締役に就きました。
更に遡れば、信越キノコ戦争(雪国まいたけVSホクト)の果てと言われた「雪国まいたけ」の不正経理問題があります。雪国まいたけは1995年ごろ、滋賀県近江八幡市に工場・物流センターを建設するため土地開発に着手し、1997年6月までの間に約7億円を手付金として支払いましたがとん挫し、結局2000~2007年に滋賀県内の別の土地を造成することになりました。手付金は、本来、計画を断念した時点で全額を損失処理すべきでしたが、同社は損失計上を回避し、資産として計上し続けていました。更に、埼玉県や東京都内に保有する物件の価値下落分を損失計上しませんでした。
東日本大震災の東京電力福島第1原発事故後、キノコに関する風評被害が拡大。売り上げが徐々に減少した時期、大手広告代理店に、風評被害を払拭するCM制作を依頼。この際、広告代理店に支払われた7億円余について、3年にわたり不正な分割計上をしていました。
これらの不正経理問題で創業者の大平喜信社長が2013年11月、辞任しました。その後、星名社長にバトンタッチし、2014年にV字回復しました。V字回復させた星名社長の退任動議を、問題を起こした創業者側がしたのです。(第4四半期に前年対比5.76%増収28.57%増益(経常利益ベース))
以下、営業効率、流動性、安全性の下位指標を示しておきます。
営業効率が大きく沈んだ2012年2013年を挟み、流動性(流動比率、当座比率、現金預金比率)、安全性(固定比率、固定長期適合比率、自己資本比率)は大きく悪化トレンドで、営業効率をカバーする姿勢は感じられません。
上記の財務指標の数値を見ると、会社は数字を見ないで経営していたのではないかと感じます。2010~2014年の4年間の悪化・乱高下以前、分析初年度2010年の流動性、安全性の数字も、それまでを物語っています。
まとめ
創業者の大平喜信社長が強力なリーダーシップを持って会社を大きくしました。上場企業ともなれば、自社の数字を見ていく人材、コンプライアンスを守ろうとした人材もいた筈。彼らの声はどうなったのでしょうか。少なくとも数字を大切にしていれば、このような事態にはならなかったのではないでしょうか。
SPLENDID21NEWS第104号 【2014年7月15日発行】をA3用紙でご覧いただきたい方は下記をクリックしてください。